冬枯れの前の、しっとりとした秋の庭。
咲いている花は減ってしまい、一見、地味に見える。
ところが、だ。
よーく近づいて見てみると、たくさんの植物が実を結んで、庭一面が「収穫祭」のような騒ぎになっていた。
草という草に種ができている。
ギボウシ、スミレ、オダマキ、アヤメ、シソ、マムシグサ、ホタルブクロ、など。雑草と忌み嫌われるエノコログサも、イヌタデも、ウドも。
開花から1か月で種になるものもあれば、2~3ヶ月かかるものもあり、いろいろだ。
文字通り「吹けば飛ぶような」小さい種が、浅間高原の冬を乗り越え、春には芽吹き、惚れ惚れするような花を咲かせ、時間をかけて実を付ける。
そのことだけで目頭が熱くなる(年なのか)。
人間は、風邪ひいて寝込んだり、シモヤケつくって騒いだりするというのに、ゴマよりも小さい粒のどこにそんな力を蓄えているのか。
並々ならぬ興味を抱いて、種というものに惹かれてしまう。
園芸初心者でビビリな私は、移植が怖い。
うく掘り起こせずに枯れてしまったら…環境の見立てが悪くて枯れてしまったら…。せっかく根付いて育っているのに、下手に動かしたことで儚くなってしまったのでは面目申し訳もない。
そう思って、悶々していた時に見つけたのが『タネから育てる山野草』だった。
タネだって、変なところに蒔けば目が出ないし、目が出たところでその後適切に面倒を見なければ枯れる。大事なことに変わりはないが、株ごと引っこ抜くより怖くない。
気難しそうな顔をした山野草も、種から育てることで丈夫に育つ事も多いとか。
そんなこんなで、この本を頼りに「種取り」が趣味になった。
庭の草花だけでなく、植えた覚えのないどこかから飛んできて育ったものも、採取している。来春が楽しみだ。