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おむすびブックス01

はじまりの気配

ものごとには必ずはじまりがある。その気配が感じられる本を集めました。

1:帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。

高山なおみ(文春文庫)

料理家・文筆家として活躍する著者が、90年代後半、レストランでシェフをしていた頃に書いたエッセイ。本格的に料理家として始動する前の30代の日々が、研ぎ澄まされた言葉で綴られる。
「たとえば、ボケてもなお自分がやってしまうこととはいったい何なんだろうと考える。それは好きとか嫌いとか、やりたいやりたくないを通り越した、これからも私の体にじっくりと、何十年もかかって染み込んでゆく動作なのだろう」

未整理の記憶、目にした風景。それらは間違いなく、今の著者の土台となっている。(梅)

2:私たちの星で

梨木香歩/諸岡カリーマ・エルサムニー(岩波書店)

「イスラームのことを学びたい、それもムスリムの方から」。作家、梨木香歩の希望を叶えるかたちではじまった、書簡のやり取り。
イスラームを入口に、エジプトの料理のこと、日本のデモのこと、翻訳家としての仕事のことなど、ユーモアを交えて綴られる。手紙という、時間をかけて相手に届く言葉が作用しあい、静かに熱く、深まっていく思索。

「私たちの 星で今をどう生きるべきか」。刻々と変化する社会の中で、対話から生きることの普遍的な喜びを見出すことができる一冊。(梅)

3:一九八四年[新訳版]

ジョージ・オーウェル/訳:高橋和久訳(早川書房)

1949年にイギリスで出版された、ディストピア(反ユートピア)小説の金字塔。
時は1984年。主人公が暮らすオセアニアは、最高権力者のビッグ・ブラザーが支配する徹底的な管理社会。思考力を奪うため国民は単純化された言語を使うよう強いられ、党員である主人公は、政府に都合の悪い事実を抹消するための文書改ざんの仕事をする。

ありえない設定とは言い切れない怖さがあり、ラスト1行も衝撃的。こんな世界が、どうかはじまらないように。(梅)

4:はじまりが見える世界の神話

植明子(創元社)

世界はどう始まったのか、私たちはなぜ存在するのか。
今なお解決されていないこの根源的な疑問に対して、太古の人々が想像した世界が「創造神話」と呼ばれる物語だ。闇だったり、水だけがあったり、竜巻が起こったり...根拠はないけど、そこには確かに何かが生まれる “気配”がある。

世界各地に伝わってきた「創造神話」を、各地の専門家20人がそれぞれわかりやすくまとめた一冊。
画家・阿部海太による、いまにも動き出しそうな絵が、神話の世界を豊かに彩っている。(鮭)

5:起源図鑑
ビッグバンからへそのゴマまで、ほとんどあらゆることの歴史

グレアム・ロートン(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

すべての物事には必ず「はじまり」がある。それは「へそのゴマ」でさえも...そんな森羅万象の「はじまり」を最新の科学で解き明かしている。
「誰がトイレットペーパーを発明したのか」「私たちはいつから死者を埋葬するようになったのか」はたまた「私たちはどのようにして『無』を発見したのか?」など全53項目の「はじまり」を収録。

カラフルでユニークな挿絵が、゙少し難しい内容も楽しく伝えてくれている。
著者は、英国の人気科学雑誌『New Scientist』副編集長。(鮭)

6:世界をきちんとあじわうための本

ホモ・サピエンスの道具研究会(ELVIS PRESS)

まだ見ぬ世界に思いを馳せるのもいいけれど、日常の中にも世界をあじわうヒントはある。呼吸をすること、コンビニ食品を味わうこと、鞄を持つこと...そんな当たり前の中に違和感を見つけ、あじわうヒント与えてくれる日常のガイドブック。

制作は、「毎日の生活の中で当たり前になっていること」を研究対象とした、人類学者中心のリサーチ・グループ。
見ているのに見えていない物事に気づくことが、世界を知るはじまりの一歩なのかもしれない。(鮭)

by 梅&鮭2018.06

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