ルオムログ

ルオムの種 2

百年の洋館

ルオムの森に建つ百年の洋館

眠れる森の「いばら姫」

はじめて森にわけ入ったとき、誰かを待っていたかのように、古い洋館が佇んでいました。
およそ100年前…大正時代の実業家・田中銀之助の別荘として建てられた、西洋式の邸宅。1階の大広間には石造りの暖炉があり、2階の小さな暖炉とつながっていました。浅間石を積み上げた重厚な煙突からは、あたたかな煙が昇っていたことでしょう。
やがて華やかな時代は終わり、主なき館はおばけ屋敷のような有様に。やむなく解体へとすすむさなかに、「取り壊してはならない」という〈直感〉を得ます。

大規模な修復を経て、洋館はよみがえりました。栗の木が贅沢に使われた褐色の床。ほんのりとバラ色に染まる壁。真っ白なフレームが美しい縦長の窓。螺旋を描くように設えらえた階段…それはまるで、100年の眠りから覚めた「いばら姫」のようでした。

わたしたちの「ちいさいおうち」

洋館の物語を聞くとき、私はもう一つの童話を思い出します。小さな丘に座って、めぐる季節と変わりゆく時代を見守りつづけた「ちいさいおうち」。美しい丘は騒々しい都市へと変わり、ちいさいおうちは新しい場所へ引っ越すことになります。

「まどや よろいども きちんとなおり、そとがわは、また むかしと おなじように きれいないろのぴんくに ぬられました。こうして、あたらしい おかのうえに おちついて、ちいさいおうちは うれしそうに にっこりしました。」

洋館が〈引越し〉を願うことなく、この森にあり続けるためにも…これからの100年がはじまります。

今日の言の葉

「ちいさいおうち」に出てくる一節。

それを ちいさいおうちは じっとすわって みていました。

建物は〈立っている〉印象があるけれど、〈座っている〉と考えると、ちょっと違ってみえる不思議。正座してる家だったり、昼寝している椅子だったり、泳いでいる洗濯物だったり…
そこから見えるのは、どんな景色ですか?

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